宮島・厳島神社に祀られている神様とは?
日本三景にも選ばれている「安芸の宮島」。
宮島は「厳島」ともよばれますが、これは「神を斎(いつ)き祀る島」という意味で「島全体が御神体」となっています。
その神聖な”厳島”に位置する「世界遺産・厳島神社」は、一般的には平安時代に平清盛公が創建(再建)した神社であるとされていますが、実のところ、推古天皇(飛鳥時代)の御代に創祀された神社であることはあまり知られていません。
現在では一般的に厳島神社は「宗像三女神(むなかたさんじょしん)※正式には”むなかたのみはしらのひめがみ”」を主祭神として奉祀する崇高な社とされていますが、現在の厳島神社が創建された当初は少し異なる名前の神様がお祀りされていたようです。
厳島神社の神様は時代によって違う?!
厳島神社は「神の島を祀る社」として、神聖な意味合いを込めて別名で「伊都伎島神社」や「厳島大明神」とも呼ばれていたようです。
星霜経て、平安時代に清盛公がそれまでの厳島神社を一新し、現在の厳島神社を創建(再建)することになる。
平安時代の厳島神社の神様
平安時代に平清盛公が創建(再建)した頃の主祭神は現行の「宗像三女神」ではなく、「伊都岐島大明神(厳島大明神)」が祀られていたとされる。
当時の厳島神社では、この神様を「大宮(おおみや)」と呼びならわし、現在の主祭神である「宗像三女神」は相殿神として、大宮の隣りでお祀りされしいたらしい。
この後、鎌倉時代後期になってようやく現行の宗像三女神が主祭神とされています。
宗像三女神が主祭神とされた理由は、宗像三女神の一柱である「市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)」が仏教の仏である「弁財天」と同一視されたためです。
「弁財天」とは?
弁財天は奈良時代に「遣唐使」の一員として中国・唐へ渡った最澄(のちに比叡山を開創)によって日本へもたらされたとされる仏様です。(諸説あり)
弁財天が日本に伝えられた当初、台所の神様として台所に祀られていたようですが、発祥の地インドでは招福・蓄財の利益があるとされていたことから、日本でも招福・蓄財の仏として信仰されていくことになります。
鎌倉時代になると、「宇賀神(下半身が蛇の神様)」と習合してさらに広く信仰されることになります。
もっぱら弁財天は我が国では七福神の一柱とされ、唯一無二の女神とされるも、れっきとした仏教の守護神である天部の一つでもある。
宇賀神とは?
「宇賀神」は現在ではあまり姿を見ることがないと思われますのでご存知の方は少ないと思われますが、下半身が蛇の身体をした神様です。この神は日本従来の神である「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」と習合して五穀豊穣、招福のご利益があるとして認知されることになります。
画像引用先:https://ja.wikipedia.org
利生の変化から「弁才天」から→「弁財天」へと表記も変化する
弁財天は宇賀神と習合したことで我が国の新たな神として素敵に降臨し、大衆は多種多様な利生(利益)を内包していると盲信した。….素敵?
やがて、福徳財富の利益があると信奉されはじめると、今日に知られる「才」に代わって「財」が付され、「弁財天」と表記されるようになる。
「弁才」とは、「才智あふれる能弁・口才の巧者」を意味し、「弁財」とは「金品を返す」いわゆる蓄財絡みの利得があるなどを示す言葉といえる。
たとえ一字だけの些細な表記の違いとはいえ、世相やそれを背景とした人々の願望に大きな変化が生じたと捉えるべきであろぅ。
弁才天は琵琶(弦楽器ヴィーナー)を持つことから芸能の神とされる
冒頭に記したように弁才天は元来、「サラスバティー」と称する弦楽器を携えた女神だったことから、仏教と習合した後もその姿態は変わることなく、弦楽器を持物とした。
我が国への伝来後は宇賀神と習合して蛇の身体を具有した類例は数多く現存するものの、現今、数多に見られる弁財天の像容や衆目のイメージとしては弦楽器を持つ姿態がオーソドックスであろぅ。
日本五弁天
以下に列記する弁財天を奉祀する五社は「日本五弁天」として名高ぅぃ。
- 安芸の厳島(広島県 宮島)
- 近江の竹生島(都久夫須麻神社/つくぶすまじんじゃ/滋賀県 大津市)
- 大和の天の川(天河神社/奈良県 天川村)
- 陸前の金華山(黄金山神社/宮城県石巻市)
- 相模の江の島(江島神社/神奈川県 藤沢市)
鎌倉時代の厳島神社の神様
以降、鎌倉時代になると武家が台頭する社会になりますが、武家が仏教を信仰しはじめたために一層、仏教が庶民層にまで浸透していくことになります。
鎌倉時代においては「弁財天」と「宇賀神」が習合して行き弁財天が信仰され始めます。このため、厳島神社の御祭神である伊都岐島大明神(厳島大明神)も「弁財天」と習合して御祭神が「宗像三女神=市杵島姫命」へ変わったと推測されます。
「市杵島姫命」と「伊都岐島大明神」が習合した理由は、単純に”いつきしま”の読みが同一であったことが述べられます。
市杵島姫命が弁財天と習合した理由
市杵島姫命が弁財天と習合した理由は、互いに「絶世の美女」として容姿が類似していていたことや、双方の神が”水の神”であり、双方の神が主に西日本の港や河口付近で祀られていたことが述べられています。
なお、弁財天は招福・蓄財のご利益以外でもインドにおいては「河(川)の神」として信仰されています。
早見表
伊都岐島大明神(厳島大明神/神)→神仏の習合で「弁才天(仏)」→宇賀神(仏)と習合→明治維新後に市杵島姫命(宗像三女神)(神)
「宗像三女神」ってどんな神様?
「宗像三女神」とは「むなかたさんじょしん」と読み、次の3柱の神様のことをいいます。
- 福岡県宗像市田島の辺津宮に祭られている「市寸嶋比売命(いちきしまひめのみこと)」
- 大島の中津宮に祭られている「多岐津比売命(たぎつひめのみこと)」
- 沖の島の沖津宮に祭られている「田心姫命(たごりひめのみこと)」
記紀神話によれば、これらの三女神は「天照大神(あまてらすおおかみ)」と「素戔鳴尊(すさのおのみこと)」の「誓約(うけひ)」のとき、「天の安河(あまのやすかわ)」で産まれたと記述されています。つまり、天照大神の御子神ということになります。
生まれたのち、天照大神のご神勅によって現在の九州宗像の辺津宮、中津宮、沖津宮に降臨されてお祀りされるようになったのが起こりとされています。
このうち「市寸島比売命」は、その容姿の美しさのあまり、神仏習合では「弁天様(弁財天)」と合わさり、「蓄財」のご利益をも併せ持つことで崇敬を集めました。
この厳島神社の社名もこの女神の名が訛っていったとされます。
宮島・厳島神社の本当の御利益ってどんなご利益?
厳島神社のご利益で一番有名なの御祭神(三女神)のご利益でもある「交通安全(海上交通安全)」です。あまり知られていませんが別名で「道主貴(みちぬしのむち)」とも呼称されるほどの神です。
これは単純に交通安全を司ることからの”道主=道の主”ではなく、国家鎮護のご利益もあるとされることから”あらゆるご利益に通じて幸福を振りまく貴女神(高貴な最高神)”とも解釈されます。
よって、古くから漁業大漁、国家鎮護のご利益も備わるとされています。
厳島神社での話に焦点をあててみると、現在の厳島神社の社殿群を創建したとされる平清盛公は、貴族中心の時代であった平安時代に父親に次いで「安芸守」に任じられ、平家2代に渡って瀬戸内海をの制海権を得ることに成功しています。
この時、清盛は職権を活用して、密かに中国の「宋(そう)」や「朝鮮」と通じて貿易を行っています。その際、海の神と云われた伊都岐島大明神(厳島大明神)を祀りたてています。
その後、貿易は順風満帆に追い風に乗り、ついには貴族をもうならせるほどの財力を得ることに成功します。
この貿易の成功によって財を成した清盛公は、厳島神社を一新する形で再建(創建)し、伊都岐島大明神に対してさらに大きな尊崇を寄せることなります。
そしてこの財力を基盤として、中央の貴族を自勢力に取り込んで立身出世を果たします。果ては平氏の最大勢力図を築くことにつながり、ついには「平家にあらずんば人にあらず」と言われるほどの日本一の大勢力を築きあげることに成功します。
以上のような由緒ある由来を持ったありがたい神様であることから、現在でも清盛の繁栄にあやかり「水災消除(海上交通安全)」や弁財天に紐づいた「蓄財招福」のご利益があるとされています。
あまり知られてない、厳島神社の「もう1つのご利益」
平安末期に厳島神社は平家一門の篤い信仰を受け、平家の氏神的存在ともなりましたが、その平家が滅亡した後も武家の信仰を厚く受け、源頼朝、毛利元就、豊臣秀吉などの庇護を受けています。
ただし、平氏が滅んで「源頼朝(源氏)」が台頭した鎌倉期には、辛(かろ)うじて庇護は受けていたものの、以前ほどの隆盛はなく少しずつ衰微して行くことになります。
しかし、次のようなできごとから「開運」や「必勝祈願」のご利益もあるとも云われています。
- 平家一門の繁栄
- 毛利元就のが厳島の戦いで勝利をおさめ安芸国を支配して西国最大の覇者になった
- 豊臣秀吉が天下統一の目前に厳島神社を参拝して見事、天下人となった
また、厳島神社には、他にも以下のようなご利益もあるとされています。
- 家内安全
- 試験合格
- 商売繁盛
- 縁結び
以上のようなご利益(効果)もあると言われ、境内ではこれらを祈願したお守りも授与(販売)されています。
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